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大阪高等裁判所 昭和61年(ラ)159号 決定

抗告人(債務者) 輪島義興

右代理人弁護士 北岡満

相手方(債権者) 児玉武行

第三債務者 社団法人西宮カントリー倶楽部

右代表者理事 芦原義重

主文

原決定を取り消す。

本件を神戸地方裁判所尼崎支部に差し戻す。

理由

一  本件抗告の趣旨及び理由は別紙記載のとおりである。

二  当裁判所の判断

民事執行法一六一条二項において債務者を審尋しなければならない旨定めたのは、被差押債権が条件付もしくは期限付であるとき、または反対給付に係ることその他の事由によりその取立が困難であるような場合に、取立命令または転付命令によらず、同条一項所定譲渡命令、売却命令等の特別な換価方法によることとしたため、右換価方法の当否を明らかにし、債務者に生ずることあるべき不測の損害を回避すべく、事前に債務者から事情を聴取せんとする趣旨に出でたものである。いわゆるゴルフ会員権は、ゴルフ場施設を優先的に利用することができる権利及び所定の条件のもとで入会保証金の返還を請求することができる権利並びに年会費を納入しなければならない義務を内容とする債権的法律関係であって、譲渡性を有する権利ないし法律上の地位であるというべきところ、右のようなゴルフ会員権の性質に徴すると、ゴルフ会員権について同法一六一条一項の特別の換価方法によるとき、同条二項による審尋を要しないと解する余地はなく、特別の換価方法の当否や債務者に生ずることあるべき不測の損害の有無を検討するため、債務者を審尋することを要するものと解するのが相当である。

一件記録によれば、原審は抗告人(債務者)を審尋することなく本件ゴルフ会員権譲渡命令を発したことが明らかであり、前説示の手続を怠った本件ゴルフ会員権譲渡命令は失当というべきである。

よって、原決定を取り消し、なお以上の審理を尽させるため、本件を神戸地方裁判所尼崎支部に差し戻しすることとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 首藤武兵 裁判官 奥輝雄 杉本昭一)

〈以下省略〉

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